“お客様は神様”ではない
昨日は久しぶりにフランクフルト中央駅に行った。
電光掲示板を見ると今日も例外なく’遅延’の文字が並んでいる。ドイツは優等生イメージが根強いので”例外なく“なんていうとビックリする人が多いと思う。でも本当の本当、電車は必ずと言いたくなるほど遅れる。
悪評高きドイツ鉄道を揶揄する歌や↓こんな面白いニュースもあるほど
遅れてばかりのドイツ鉄道へ恨みを込めて編んだ「遅延マフラー」とは?
(引用:ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト www.newsweekjapan.jp)
2021年ドイツ鉄道の発表では2020年の定刻運転率が81.8%で15年ぶりの快挙という誇らしげな記事を見た。「うーん、そんな悪くもないんじゃない?」と言われそうだけど、まず独では6分以内の遅れは遅延とカウントされないし、2020年はロックダウンで厳しく移動制限されていたのでかなりの本数の長距離電車がキャンセルされたり、在来線も休日ダイヤになったりそもそも通勤客がいなかったので遅延の要因自体が激減した状況下でこの数字。。
電車にまつわるとんでもハプニングを挙げれば1冊の本が書けそうなくらいたくさんあるけど、ある意味『さすがドイチランドだ』と思ったこともある。
スイスからドイツへの長距離列車を乗り継いだ時のこと🚄。
定刻通りに乗り換え駅に着き、次の電車がホームで待っていてくれてホッとしたのも束の間、座席に座った途端「この先を走る他の電車が故障したため復旧作業が終わるまでこの電車は出発できません」というアナウンスが流れた。もちろんほとんどの人はそんな状況には慣れているので車掌さんに復旧の見通しや次の乗り換えができなかった場合の別ルートを確認する人はいても怒りをあらわに怒鳴ったりする人はいない、というか少なくともワタシは見たことがない。お詫びの印にいただいた水を飲みながらひたすら読書をすること2時間以上、そろそろ飽きてきたころ遂にその時が!
「復旧作業が無事に終わりました」
『おーようやく動き出すのか~😃』
と喜びもつかの間「が、しかし今から出発した場合終点到着時の運転士の拘束時間が法定労働時間を超過してしまうので下車させました。代わりの運転士がこちらに向かっているのでお待ち下さい。」
*一日の労働時間は原則8時間まで、他の日との調整を条件に最長10時間まで認められている。10時間を超過することは法で厳しく禁じられており、労働安全局に見つかれば経営者は罰金や禁固刑を課されることもある。
諸々のハプニングに慣れてる乗客もさすがに“ズコッ”🤪(死語だと思うけど他に浮かばない)
「えー勘弁してよーまだ待たなきゃなんないのー」ってみんなグッタリ。。
でもジタバタしても仕方ないのでまたもやおとなしく待つこと1時間半。ようやく運転士がやってきた。
こんな数百人を3-4時間待たせても一人の運転士の法定労働時間は例外なく守るのは良くも悪くも『さすがドイツだ・・😳』と、疲労困憊&空腹で意識フラフラしつつも妙に感心した。もちろん「それならもっと早く代わりの運転士を見つけておけ!」とツッコミたかったけど、そんな批判も恐れることなく正直にアナウンスしちゃうところもある意味ドイツらしいと思った。
日本だったら有無も言わさずこの運転士は終点まで勤務することになるのだろうか、だって「みんなに迷惑かけてるから」と。。
完璧サービス/過酷労働の日本とサービス砂漠/労働者天国のドイツ、あまりに両極端の二国。たしかに乗客・利用客の権利も大切だけど、サービスを提供する側の権利も守られるべきよね。誰かの人生や命を犠牲にしてまで”誰にも迷惑をかけない”ことはそんなに大事なことなのかと、考えさせられた。
もちろんそんな心境になったのはごはんをたらふく食べて一晩ぐっすり寝た後だけどね。
環境問題対策として欧州内で鉄道の活用が注目を浴びていて、独政府も路線を増やしたり廃線を復活させたりインフラを刷新させるために多額の投資をしつつ、遅延問題にも真剣に取り組んでいるというけど鉄道網のさらなる発展とそれによる乗客の増加で遅延率がこれ以上上がらないことだけを祈る。。