1/13の確率
夏休みも終わり、バカンスに出かけていた人たちもぞろぞろとオフィスに戻ってきた。
この夏は久しぶりに規制なく動き回れるとあって観光地はどこも混雑していたようだし、大きな展示会やお祭りなんかの催し物も開催されたので結構な人混みにも遭遇した。
通常ならば欧州内は国内線感覚でどこでもピピッと手軽に飛べるところ、この数ヶ月主要空港がものすごいカオス状態なのでワタシは静かに地上移動していた。
というのもドイツ政府による燃料や電力の高騰化による国民対しての救済措置の一環で、今年6~8月の3ヶ月間はたった9€/月で独全土の公共交通機関乗り放題というなんともオトクなチケットが売り出されたのでそれをフル活用、新幹線のような高速列車は除外なので、快速列車や普通列車などを乗り継ぐ片道2-3時間の遠足に合計13回出かけた。
普段山も丘もない平らな場所に住んでると、ちょっとした坂道の景色や切り立った崖のようなものを見るだけで遠い国に来たような気になるし、一面広がるぶどう畑の中を走り抜ける時は呑めないくせに『今年のワインはどうかしら~』なんて考えたりと、車窓からの眺めを楽しみながらおやつをぽりぽり・・
ぶどう畑は四季それぞれの色と景色が美しい。夏はたわわに実ったぶどうが車窓からもよく見える🍇
そんな優雅なのは早朝の往路だけ。復路はとにかくどうやったら出発地点に戻れるかサバイバルゲーム状態なので疲れてても居眠りなんかしてる場合じゃない😱
以前にも書いたとおりドイツの電車は予定通りに来ない。遅れるだけならまだしも突然キャンセルされたり途中で止まったり車両が切り離されたり・・とにかくサプライズが多い。そんな諸々がネットの乗り継ぎ検索にオンタイムで反映される訳ないので、駅や車内の放送に耳を傾けたり、わからなければ誰かに聞いたり、スクリーンの表示を見ながら別のホームへ走ったり。そういう緊急事態のアナウンスはドイツ語だけだし、代替電車やバスを乗り継ぐにはざっくり地理がわからないとさっさと判断できないので、とにかく始終手足脳みそフル回転。最後の乗り継ぎが成功して電車に乗り込む瞬間は本当にゲームで全レベルクリアしたみたいな達成感と疲労感でいっぱいになる。
というわけで13回の遠足のうち、“ほぼ”予定通りなんの苦労もせずに戻って来られた不戦勝がたった一度きり、それ以外の12回は死闘の末どうにかその日のうちに公共交通機関を使って帰って来た。よく頑張ったぞワタシ👏🏼👏🏼👏🏼
美しい田舎道をツーリングするために自転車と一緒に乗り込んで来る人たちもたくさん。車内に専用スペースもあり。
こういうことが日常茶飯事だと、たとえトイレもカフェもなーんにもない駅に突然放り出されても、みんな躊躇なく草むらに用を足しに行ったり、家族連れは食べ物を広げてピクニックを始めたり、わりと呑気にやり過ごしているけれど、そんなことを1ミリも予想だにしていなかった外国人観光客はもちろんパニック。顔面蒼白で困り果てている姿を見かけるととても気の毒になる。
おそらく昔のワタシを含め“ドイツきちんとしてる説”を盲目的に信じてる人がたくさんいるので、ぜひ『電車は遅れてくるもの。予定通り乗り継ぎできたらそれは奇跡。』とガイドブックにでも大きく書いておいてほしいと切に願う。
これイタリアの電車でも見かけるけど、窓から物を投げ捨てないでってサイン。注意書きがあるってことはそんな人がいるってことよね。。
今夏の一番の非常事態は、遠足先で駅に戻ったら『本日13時以降○○駅から△△駅まですべての駅は閉鎖され電車も来ません』と貼り紙があったこと。鉄道会社のホームページにも情報なし、コールセンターは週末だから休業。ホテルで一晩過ごすしかないかと思い始めた2時間後よくわからない行き先の代替バスが来て、乗っては降ろされを繰り返し、無人駅で当てもなくひたすら電車を待ち、どうにかその日中に帰ることができた。で、そもそも何故そんなことになったのかって理由は病欠者が出たから。。そういう事態に備えてバックアップのスタッフはいないのかとか、間引き運転くらいできないのかとかつっこみたくなるけれど、数百人の乗客が路頭に迷おうとも具合が悪い社員の病欠を取る権利を保障するのはある意味“きちんとしている”といえるのかもしれないし、別の解釈をすれば、“きちんとしている”=定刻通り、とは限らないのかもしれない。